座ったまま・寝たままの着付けとは ― 一般的な着付けとの違い

「着物の着付け」と聞くと、立った姿勢で長い時間をかけて着付けるイメージがあると思います。
一般的な着付けでは、通常の着物で約30分、振袖では約40分かかることがあります。
その間、ご本人は立った姿勢を保ち続けなければなりません。
肌襦袢、長襦袢、着物と何枚も重ね、長い着物を固定するために最低でも3本ほどの紐を使います。
さらに帯を二重に巻き、緩まないように締め、その上から帯揚げと帯締めを付けていきます。
健康な方でも、慣れない締めつけによって体調を崩すことがあるほど、一般的な着付けは身体への負担が大きいものです。
着付けの苦しさをなくすことが、当日を楽しむ鍵です
一般的な着付けの手間や締めつけを考えると、車椅子の方、寝た状態で過ごす方、半身麻痺などの後遺症がある方、医療機器を使用している方にとって、着物を着ることは難しいと思われがちです。
しかし、重要なのは着物を着られるかどうかだけではありません。
着物を着ている時間を、楽に過ごせるかどうかも大切です。
せっかく着物を着ても、締めつけが苦しかったり、トイレへの不安があったりすると、落ち着いて一日を楽しむことができません。
身体への負担を抑えながら長時間過ごせることが、晴れの日を楽しむための大前提になります。
羽衣スタイルがお届けしているのは、座ったまま、または寝たままでも、長時間楽に着られる福祉着物です。
この記事では、一般的な着物と何が違うのか、なぜ車椅子の方や介護が必要な方でも無理なく着られるのかをご説明します。
一般的な着付けの前提
一般的な着物の着付けは、次のようなことを前提としています。
- ご本人が立った姿勢を保てること
- 30~40分ほど、その姿勢を続けられること
- 背中側で帯や飾り帯を結べること
- 複数の紐や帯による締めつけに耐えられること
このような着付けの順序があるため、長時間立っていることが難しい方、座位を保ちにくい方、寝た状態で過ごす方にとって、一般的な着付けはハードルが高くなります。
「自分は着物を着られない」と思われてしまう理由の多くは、ここにあります。
座ったまま・寝たままの着付けとは
座ったまま・寝たままの着付けは、一般的な着付けの前提を変えた方法です。
ご本人が立たなくても、長時間同じ姿勢を保てなくても着られるよう、着物自体を特別な形に仕立てています。
また、何枚も重ね着をしなくてよいよう、衿が一体になったセパレート式の着物を採用しています。
座ったまま・寝たままの着付け手順
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下衣を着せます
スカート着物またはエプロン着物を、専用の着せ方マニュアルに沿って着付けます。着せ方動画も参考にしてください。 -
上衣を着せます
衿の後ろ側を首に合わせて羽織ります。半身麻痺で腕が上がりにくい方や、座位保持が難しく背中を起こせない方にも着せやすいよう、背中にファスナーを付けています。 -
帯揚げ付きの帯を巻きます
一人ひとりのウエストサイズに合わせた帯を、マジックテープで留めます。通常の帯のように何度も巻く必要はありません。 -
飾り帯を付けます
飾り帯は別に作られているため、車椅子の後ろ側や前側など、ご本人の過ごし方やご家族の希望に合わせて取り付けられます。 -
帯締めを付けます
帯の上から帯締めを巻きます。一体型帯の場合は、あらかじめ縫い付けられています。
約10~15分で、車椅子での着付けが完成します。
バギーでも着物を着ることはできますか?
はい、バギーをご利用の方も着物を着ることができます。
バギーは車椅子よりも背中の密着部分が広く、上体を起こしにくい場合があります。
そのため、エプロンタイプの着物や、前板と帯が一体になった帯を利用すると着付けしやすくなります。
着物や帯の適した形は、ご本人のお身体の状態や体力によって異なります。
詳しい選び方は、事前にご相談ください。
要介護度5でも着物は着られますか?
はい、要介護度5の方でも着物を着ることはできます。
結婚式での留袖は、要介護度の高い方にも多くご利用いただいています。
車椅子をご利用の方や、ほとんど身体を動かすことができない方であっても、「結婚式に参列したい」「母にも出席してもらいたい」という思いは変わりません。
留袖を着ることで気持ちが明るくなり、楽しく結婚式へ出席できたというお客様からのメッセージも多くいただいております。
身体への負担をどのように減らしているのか
座ったまま・寝たまま着られる車椅子用着物には、ご本人の身体への負担を減らすための工夫があります。
負担を減らすための工夫
- 紐で丈を調整するのではなく、一人ひとりのサイズに合わせて着物を仕立て直すセミオーダー方式
- 座った姿勢・寝た姿勢に合わせやすい、上下が分かれたセパレートタイプ
- 車椅子から立ち上がることなく着られるエプロン着物
- お尻側にも着物の生地が必要な方には、ウエストがゴムになった巻きスカート着物
- 半身麻痺・全身麻痺がある方でも袖を通しやすい背中ファスナー
- 麻痺やむくみがある足にも履きやすい、鼻緒にゴムを使用した草履
- マジックテープ式の帯と、前板一体型の帯の2種類を用意
- 座位を保つことが難しい方には、前板一体型の帯を提案
「寝たままだから着物は着られない」と諦めないでください
車椅子の方や介護が必要な方も、身体の状態に合わせた専門の着物を選ぶことで、楽に着用できます。
長時間着ていることができなければ、結婚式や成人式を十分に楽しむことはできません。
要介護度が高い方ほど、身体への負担を抑えることが重要です。
晴れの日を楽しむためにも、座ったまま・寝たまま着られる福祉専門の着物をご検討ください。
お客様の声
立てないから着物は無理だと思い込んでいました。
座ったまま着られると知って驚き、成人式で振袖を着ることができました。
家族も本当に喜んでくれ、振袖を着て本当によかったと思いました。
成人式で振袖を着用されたお客様より
病気で寝たきりになってしまった母に、どうしても結婚式へ出席してほしくて、羽衣スタイルの着物を見つけました。
病院から許可をいただき、ヘルパーさんに着付けてもらいました。
母のうれしそうな顔は忘れません。ありがとうございました。
結婚式で留袖を着用されたお客様のご家族より
よくあるご質問
Q.座ったまま・寝たままの着付けとは何ですか?
A. ご本人が立たなくても、長時間姿勢を保てなくても着物を着られるよう、着物の仕立てと着付けの順序を工夫した福祉専門の二部式着物です。
車椅子に座ったまま、またはベッドで横になったままの状態から着付けを進めます。
Q.一般的な着付けと何が違いますか?
A. 一般的な着付けは、立った姿勢を保てることを前提としています。
羽衣スタイルの着物は、その前提を変え、無理な姿勢を取らずに着せられる点が大きな違いです。
Q.寝たままでも本当にきれいに着られますか?
A.はい、着られます。
寝た状態に合わせた着付け方法があり、仕上がりも美しく整います。
結婚式、成人式、記念日などで、多くの方にご利用いただいております。
Q.座ったまま・寝たままの着付けは時間がかかりますか?
A. 丈を事前に調整しているため、着付けの知識がない方でも約10~15分で着せることができます。
短時間で負担なく着せられることは、晴れの日を楽しむための体力を残すことにもつながります。
Q.どのような方が利用していますか?
A. 次のような方にご利用いただいております。
- 車椅子を利用している方
- 座位を保ちにくい方
- 寝て過ごす時間が長い方
- 要介護度の高い方
- 麻痺や拘縮がある方
- じっとしていることが難しい知的障がいのある方
身体の状態に合った着物で、楽しい時間を
座ったまま・寝たままの着付けは、特別なことではありません。
その方の身体の状態に合った着物を選ぶことで、無理なく着物姿を楽しむことができます。